兄妹備忘録

兄妹厨がひたすら兄妹にまつわる作品について書き留めるブログ

きっかけ

私が「兄妹」と出会ったのは、高校1年生の時だった。

 

イナズマイレブンというゲームをご存知だろうか。そこの説明に文章を費やすのも面倒なので詳細は省くが、あらすじだけ言うと「サッカー少年が自校の弱小サッカー同好会を部活に発展させて全国一目指して邁進する」という感じである。王道ながら熱い展開と、素朴で耳に残るテーマソング、そして多種多様なキャラクターが魅力のゲームだ。

 

このゲームに登場するメインキャラクターの一人、鬼道有人(以下、鬼道さん)とその妹、音無春奈(以下、春奈)こそが私に人生で初めて「兄妹っていいな……」と思わせたご両人である。

鬼道さんは主人校(雷門中学)のライバル校の帝国学園に在籍する生徒だ。帝国サッカー部はフットボールフロンティアという大会で40年の無敗を誇る名門で、鬼道さんはそこのエースであり、キャプテンを務めている。

帝国は冷酷非道、試合で敗北した相手校を破壊するなど過激な面のある学校で、司令塔である鬼道さんも登場時はバリバリの悪役ムーブをかましていた。

ドレッドヘアにゴーグル、真っ赤なマントと極めて個性的な外見の鬼道さんは、厳しめの名前も相まっていかにもヒールだった。

そんな彼には、ある夢があった。「離れ離れになった妹、春奈と一緒に暮らすこと」だ。幼い頃に両親を飛行機事故で亡くした鬼道さんは妹の春奈と二人、児童養護施設で育ったが、昔からサッカーの才能に恵まれていた彼だけが鬼道家に引き取られた。鬼道さんは過去を断ち切るために養父から妹と連絡を取ることを禁じられていて(今考えたら厳しすぎやろと思う)、三年間フットボールフロンティアで優勝することを条件に妹を鬼道家に迎え入れると約束をしていたのだ。二人の名字が違うのは、別々の家に引き取られたためである。

なお妹の意思確認は一切行っておらず、養父母に可愛がられて育った春奈には案の定断られた。というかそもそも春奈は兄に捨てられたと思い込んでいたので、優しかった兄の変貌ぶりにはショックを受けており、当初関係の溝はかなり深かった。自分を引き取るために頑張っていたことを知ってからは和解したが、上記の通り音無の家を出るつもりは全くなく、鬼道さんもこの件は独りよがりだったと反省しているようだった。

天才ゲームメイカーと呼ばれるわりに猪突猛進で視野の狭かった鬼道さんだが、妹はといえば真逆の性格だった。ゆるくウェーブがかったショートボブに、額に乗せた赤縁メガネがトレードマークで、男子には結構モテる。情報収集が得意な雷門サッカー部マネージャーの春奈は、明るく活発な女子である。本当に血が繋がっているのか疑いたくなるが、正真正銘の兄妹だ。

話は変わるが、イナイレ界はキャラの多さと魅力的な関係性からカプが乱立する傾向にあるジャンルだった。あちこちでカップリングが模索され、この子もまたいい感じのサッカー少年が何人も彼氏候補に上がっていた。(オタクの頭の中で)

私はいわゆる男女カプ好きだったので、女子マネや女子選手受けを嬉々として日々漁っていた。しかしそれが春奈のこととなると話は別だった。春奈受けのカプ絵を見ると何かもやもやしたものを感じてしまい「かわいいけど、お兄ちゃんは大丈夫?」とよくわからない視点で心配してしまうのだ。春奈には鬼道さん…すなわち”お兄ちゃん”という存在がいるのに、と…。

そんな憤りを助長させたのが公式の燃料投下である。公式はぶっちゃけ、兄妹または兄弟に関する爆裂萌えエピソードの宝庫だった。中学生が主役なので家族にスポットが当たってもまあ不思議ではないのだが、そんな理屈はオタクの情熱を止める理由にはならない。妹が兄におにぎりを作れば「ハァ!!かわいい!!お兄ちゃんが好きなんだね!!」と膝を叩き、兄がさらわれた妹を救おうと奮闘すれば「魔界の民GJ!!なんかエロい衣装も最高!!お兄ちゃん頑張って!!」と興奮に息巻いた。そんな絶え間ない供給にオタクの心は追い立てられ、寝ても覚めても兄妹について考えさせられるまでに追い詰められてしまったのである。

この供給過多について、私なりの考察を述べたいと思う。兄妹の思いやりの描写は多分、恋愛よりもずっと扱いやすい。普通の男の子と女の子がいい雰囲気をかもしたらその後展開に影響するし何かと気を使うが、家族というわかりやすいグループ分けをされた兄妹は、その辺の配慮はほとんど必要ないからだ。兄が妹を心配し、妹が兄に尽くすという構図はなんら後ろめたくもなく、またその先に起こる展開にも変動は少ないため極めて平和だ。家族が家族以上になることはあり得ないし、それを邪な目で見る視聴者の方の存在などを想定して作品作りをしてはいないだろう。

そういうわけで(?)友情、青春、家族愛、全部が一緒くたになっていたイナイレという作品にあちこちの扉を開かれた結果、開けっ放しになってしまったのが兄妹好きの性癖であった。以来、イナイレに対する熱が鎮まってからも私は夜な夜な兄妹を求めて現世を彷徨う浮かばれない兄妹厨と化したのである。

 

ちなみに、姉弟も好きです。父娘と母息子はそれほどでもないけど場合よっては見ます。